交通事故によって、自分の車が「事故車(修復歴車)」になってしまうことがあります。
自分に責任がある事故であれば仕方がありません。しかし、場合によっては相手が悪い事故で車の価値が下がってしまうことがあります。
そうすると、次に車に買い替えるときには事故がなかった状態よりも中古車としての評価が下がり、安い価格でしか売れなくなることも。
このことを「格落ち」「評価損」「事故落ち」「査定落ち」などと呼びます。
交通事故によって自分の車が事故車となってしまった場合には、相手の保険会社にそのぶんの補償を求めることになります。
格落ちとなった車の補償はどうやって保険会社求めればいいのでしょうか?
そもそも、実際に補償してもらうことは可能なのでしょうか?わかりやすく解説します。
自分の過失割合がゼロだと、保険会社は対応してくれない
格落ちについて説明するまえに、知っておきたいポイントがあります。
それは、自分の過失割合がゼロ、つまり自分に責任がまったくない事故の場合、あなたが加入している保険は使えません。
つまり、事故が起きても保険会社の人は対応してくれず、相手との交渉は自分ですべて交渉などをしなければいけません。
自動車保険というのは、自分の過失割合があるときは使えますが、ゼロのときには使うことができない仕組みになっているからです。
ですから、もし格落ちによる交渉をするのであれば、自分でやりきるか弁護士に依頼する必要が出てきます。
格落ちは賠償してもらうのがむずかしい
結論からいうと、評価損(格落ち)による賠償を求めても、実際に損害賠償してもらうのはむずかしいのが現状です。
なぜかというと、加害者側(事故の相手)の保険会社はなるべくお金を支払いたくないからです。
つまり、相手の保険会社があなたへの支払いを避けようとするんですね。なにかと理由をつけて賠償できないと伝えてくることが多く、保険金の支払いを渋ります。
結果的に、査定額が落ちた分は自分で負担することになるケースが多いのです。
格落ちの賠償は判例に従うことが多い
じつは格落ちによる評価損には明確な決まりがないので、現状では裁判の判例をもとに判断することが少なくありません。
評価損の損害が認められるのは、以下のような要件が必要です。
- ・新車登録から3年未満の車であること
- ・修理費用が20万円以上であること
- ・走行距離が3,000キロ以内であること
新車登録から3年未満の車であること
格落ちの損害が認められるのは、おおむね新しい車に限られています。目安は新車登録から3年間です。
つまり、新車登録から3年超が経過している車は格落ちによる損害が認められにくいということです。
長く乗っている車はそれだけ”時価”が下がっていますから、どうしても評価損は支払われにくいんですね。
修理費用が20万円以上であること
格落ちを考えるときには、修理費用も要件となってきます。
そもそも修理費用がそこまでかからないのであれば、評価損という考え方は生まれません。
裁判の判例では20万円以上を格落ちと認めることが多くなっています。つまり、修理費用に20万円かからない車は格落ちの対象外となります。
走行距離が3,000キロ以内であること
走行距離が短いということも、格落ちを考えるときに重要です。さきほど説明した「新車登録から3年」というのも、関係してきます。
新しくて、なおかつ走行距離が少ない車でないと格落ちは認められにくいのが現状です。
これらの要件を満たしていれば、評価損の損害賠償を請求することは可能です。
とはいえ、明確に決まっているわけではないので、保険会社としてはこれらの条件が揃っていても支払わないスタンスをとります。
また、事故担当者の中には「判例で出ている」ということを口実に賠償できないと伝えてくるケースもあります。
交渉次第ですが、評価損の損害賠償請求はカンタンではないことを理解しておきましょう。
格落ち損はどうやって交渉すればいい?
このように、評価損は損害賠償を請求してもカンタンには話が進みません。
あなたの過失割合がゼロの場合、自分が加入する保険会社は窓口になれませんから、自分で交渉をする必要があります。
しかし、保険会社の担当者は知識でも私たちより勝っていますし、場数を踏んでいるので素人にはむずかしいのが実状です。
もし交通事故によって評価損が発生した場合には以下のような交渉を試みましょう。
- ・なぜ、評価損が認められないのかを保険会社に説明を求める
- ・事故車となってどれくらい価値が下がってしまったのかを客観的に示す
- →自分の車と同じ条件の車を探して、平均価格を算出する
- ・「事故減価額証明書」を発行してもらう
- ・判例を提示して、同じ条件で支払いが認められたケースを活用する
評価損が認められない理由を提示してもらおう
評価損、すなわち格落ちが認められないのであれば、きちんとした理由を示す必要があります。
さきほど説明したような条件にあてはまっていないか確認しながら、保険会社の説明を受けましょう。
ただし、こちらもそれなりに知識をつける必要があります。
事故車となってしまった車の価値はいくら?
事故によってあなたの車がどれくらい価値が下がってしまったのかを示しましょう。
その金額が明確で無いと、相手と交渉の余地がありません。
そのとき、公的な機関に評価額の査定を頼むこともできますが、中古車として販売している同条件の車を調べておくと参考になります。
日本自動車査定協会で証明書をもらう
客観的な証明という意味では、日本自動車査定協会に事故減価額証明書を発行してもらうのがいいでしょう。
この証明書があれば、第三者による格落ちが証明できるので、交渉が有利に進みます。
相手方の保険会社に対しては、こうした客観的な書類やデータを示すことが最善の策になります。
事故担当者に電話をかけて交渉しても、マニュアル通りに賠償を拒否してくるだけです。
まずは相手を土俵に上げること、それが何よりも重要な選択になります。
弁護士をつけて裁判という選択も
評価損に対して、相手の保険会社はカンタンに支払いをしてくれません。
長いこと話が続くと「裁判」という流れになることも少なくないのが実態です。
もし納得がいかないのであれば、裁判に出るというのもアリですが、その場合には当然、弁護士を立てる必要があります。
こうしたときに役に立つのが自動車保険の「弁護士特約」です。
これは、もし裁判になったときに弁護士費用を自動車保険の中から補償してくれるというもの。
保険会社によって補償内容は異なりますが、弁護士費用を300万円までを上限に補償してくれる、といった内容になっています。
評価損はカンタンには話が進みません。
保険会社によって弁護士特約のサービス内容が異なることがあるので、しっかりと比較をして万が一に備えるようにしましょう。
もし格落ちによる評価損まで補償をしたいのであれば、弁護士特約で備えておくことをオススメします。また、現時点で格落ちに悩んでいるのであれば、弁護士特約を活用すべきです。
弁護士特約をつけられる自動車保険はいくつもありますが、保険会社によって保険料は大きく異なります。
備えをしっかり、保険料を安く、という条件の保険会社を見つけるためにも、事前にしっかり見積もりを比較するようにしましょう。