自動車保険に入るときは、自分で必要なプランを決めなければいけません。
あまり聞き慣れない用語が並んでいることもあって、何がなんだかわからないという人も多いのではないでしょうか?
車の保険ではいくつか重要な補償がありますが、そのなかでも対物賠償保険と車両保険のちがいについて解説します。
対物賠償保険は「相手のモノ」に対する保険
まずは対物賠償保険について見ていきましょう。
対物賠償は、「モノに対する保険」です。ここでいう”モノ”とは、事故の相手方の車などを指します。特に相手の自動車や所有物です。
たとえば、事故が起きたときに以下のようなモノに対して補償金が支払われます。
- ・相手の車の修理費用
- ・ガードレースや電柱
- ・レッカー代
補償されるのはあくまでも「他人のモノ」
ここで注意したいのは、対物賠償保険で補償されるのはあくまでも他人のモノである、ということ。
つまり、自動車同士の事故で自分の車が壊れてしまっても、対物賠償では補償されません。
また、”他人”という視点に立つとわかるように、身内同士の事故による損害も対物賠償の対象外です。
たとえば、夫婦が乗っている2台の車が衝突事故を起こしてしまっても、対物賠償保険は使えません。
「直接損害」と「間接損害」とは?
対物賠償保険には、「直接損害」と「間接損害」があります。
- 直接損害とは?
- 実際に発生した損害そのもの
- (自動車の修理代やガードレースの損害額)
- 間接損害とは?
- その損害がなければ得られたはずの利益
- (タクシーや店舗が休業することで失われた利益)
直接損害はわかりやすく、実際にその事故で直接発生した損害です。
一方、間接損害はタクシーやバス、店舗を破壊されたことによって休業を余儀なくされたときの逸失利益まで補償しなければいけません。休業中の従業員の給与まで含むことを考えると、損害賠償額はかなりの金額になることが予想できます。
対物賠償保険が補償する範囲は非常に広いので、手厚い補償を設定しておかないと万が一のとき大変なことになります。
対物賠償の補償が受けられない人の範囲は?
対物賠償の補償範囲は「他人のモノ」ですが、もう少しくわしく確認しておきましょう。
補償の範囲を知らないと、対物賠償で補償されると思ったのに補償されないという事態になりかねません。
さて、対物賠償の補償対象外となるのは以下の範囲です。
- ・被保険者(補償を受ける主となる人)
- ・被保険者の配偶者
- ・被保険者の同居の親族
- ・被保険者の別居の未婚の子ども
- ・被保険者の許可を得て車を使った人(友達など)
被保険者とは、補償を受けるときの中心となる人です。一般的な家族であれば、夫(父親)がなるケースが多いでしょう。
そして、被保険者の配偶者、さらには一緒に住んでいる家族は対物賠償の補償が受けられません。
被保険者と一緒に住んでいなくても、未婚の子どもは対象外です。
さらに、被保険者が友達に車を貸して、そのときに起きた事故なども対象外です。
いろいろと細かい決まりがありますが、ざっくりと「親族は対物賠償保険の対象外である」と考えればわかりやすいでしょう。
対物賠償で賠償金はいくら支払われる?
気になるのは、対物賠償で保証できる保険金額です。
保険会社によってちがいはありますが、基本的に対物賠償保険の補償金額は以下の金額から自分で決めることになります。
- ・1000万円
- ・5000万円
- ・無制限
たとえば、あなたが対物賠償保険の補償金額を1000万円までに設定したとします。そのあと、交通事故で相手の財物を破壊してしまい、に5000万円の損害賠償を払うことになりました。
すると、対物賠償賠償保険が1,000万円を払ってくれますが、残りの4,000万円は自腹となります。
このように、賠償金額によっては自分で決めた上限額までしか払われないことがあるため、基本的には「無制限」で加入することをおすすめします。
一例として、ソニー損保では加入者の97.8%が対物賠償保険無制限に加入しています。
対物賠償で発生した実際の補償金額を見てみよう
対物賠償保険といっても、いまいちイメージが浮かばない人もいると思います。
ここでは、実際に交通事故で発生した損賠賠償金をチェックしておきましょう。
認定損害額 | 判決年月 | 賠償の対象 |
---|---|---|
2億6,135万円 | 平成6年7月 | 積荷(呉服・洋服・毛皮) |
1億3,580万円 | 平成8年7月 | 店舗(パチンコ店) |
1億2,037万円 | 昭和55年7月 | 電車・線路・家屋 |
1億1347万円 | 平成10年10月 | 電車 |
6124万円 | 平成12年6月 | 積荷 |
高額な賠償が実際に多数起きています。
さきほど対人賠償保険は無制限にすべきと説明しましたが、その理由を実感いただけると思います。
対人賠償を1000万円にして、2億円近い賠償金が発生したときのことを考えると恐ろしいですね。
要注意!自賠責保険に対物賠償は存在しない
車を持つすべての人に加入が義務づけられている自賠責保険には、対物賠償保険がありません。
つまり、任意保険で対物賠償保険に加入していないと、損害額はすべて自腹になります。
自賠責保険は、対人賠償のみが対象となっているため、交通事故で歩行者などを死傷させたときにしか使うことができないのです。
さらにいえば、自賠責保険で支払われる対人賠償保険の保険金も最大3,000万円と少額なため、死亡事故を起こしたときには億単位の賠償金が自腹となります。
任意保険に入らないのがいかに危険か、わかっていただけるかと思います。
車両保険は、自分の車を補償するために保険
さて、ここからは車両保険について見ていきましょう。
車両保険は、交通事故や自損事故によって発生した自分の車を補償するための保険です。
たとえば、自動車同士がぶつかって、自分の愛車のバンパーが凹んでしまった。そんなとき、修理費用を車両保険が支払ってくれます。
ポイントとなるのは、車両保険の対象が”自分の車”であるということ。相手の車を補償するのは、対物賠償保険です。
車両保険は、駐車場で車をこすってしまったときなど、些細なキズやヘコミでも使える保険です。
さらに、盗難やイタズラによって車が傷つけられたとき、洪水や雷による損害にも対応します(地震や津波は対象外)。
このように、車両保険は補償範囲が広いため便利な一方、加入すると保険料が非常に高くなりやすい保険でもあります。
たとえば、日産ノート(26歳以上で10等級の人が加入)の年間保険料を比較してみるとよくわかります。
- ・車両保険あり
- 106800円
- 車両保険なし
- 49400円
車種は加入条件によってちがいはありますが、車両保険をつけると5万円以上も保険料が高くなってしまいます。
そのため、保険料を安くしたい人は対人賠償と対物賠償の最低限のプランを選ぶといいでしょう。
ただし、自動車保険は保険会社によって保険料がちがうため、安い保険料で車両保険に入ることができます。
もし対人・対物賠償だけでなく、車両保険もセットしたい場合には、一括見積を使って保険料を比べるようにしましょう。
対物賠償保険と車両保険のちがいは「他人」と「自分」
あらためて、対物賠償保険と車両保険のちがいについてふりかえっておきましょう。
- 対物賠償保険とは?
- 事故の相手(他人)の財物を補償する保険
- 車両保険とは?
- 自分の車のキズや故障を修理するための保険
対物賠償保険と車両保険のちがいは、「他人か、自分か」にあります。
最低限、対物賠償保険の無制限は必ずセットするようにしましょう。車両保険についてはセットするのがベストですが、保険料を払えない人は無理に入らなくてもOKです。
ただし、保険会社をくらべることで対物賠償保険と車両保険を割安な保険料でセットすることはできます。
まずはあなたの保険料がいくらぐらいになるのか、気軽に見積もりをとってみましょう。